『美味しく、甘く』
正守×良守


ヴァレンタイン企画


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「フフフフ・・・今日のは最高に上手く出来たぜ・・・・・・」
良守は自然とこみ上げる感動にしばし浸った。


今日は学校で唐突に思いついたお菓子を作ってみたのだ。
家族は全員で払っていていて、いつも文句ばかり言う繁守もいない。
上機嫌で作れたのでいつも以上に良い出来栄えの作品になったのだ。
「さて、じじいが帰ってくる前に避難避難っと・・・」





部屋に着いた良守は、机の上に置くと皿の大きさに合わせた結界を張った。


少し強度を高めて簡単には破られないように。


「よーし！これで大丈夫だ」
「Trick or treat！」

満足気に腕を組んだその矢先に、唐突に男の声が背後から聞こえた。
良守は驚いてびくりと肩を震わせる。
だが、はぁー・・と長い溜め息を付いた。

「・・・気配絶って人の部屋に勝手に来んな」
「なぁんだ。そんなに驚かなかったな」
「お前にいちいち驚くのが惜しくなったんだよ・・・バカ兄貴」

クツクツと笑う声に少し苛立ちを覚え、ようやく後ろを向く。
するとそこにはやはり、薄い笑みを貼り付けた兄・正守が立っていた。



どうやったらこんなに近くまで寄れるのか。

はたまた自分が鈍いだけなのか。


どの道考えただけでも腹が立った。



「・・・で、さっきの返事は？」

思い出したようにぽんと手を打つと、正守は良守の視線に合わせるために少し腰を屈めた。
良守は、俺がそうされるのを嫌うのを知ってるくせに、と心の中で悪態を付いた。

それでも、久しぶりに兄に会えて嬉しいと言う気持ちの方が大きくて。

彼はふいと顔を逸らした。

「“お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ”って意味だ。今日はハロウィンだろ？」
「はろーうぃん？」

そう言えば今日クラスの女子が騒いでたなと、ふっと頭の中をよぎる。
唐突に作ったこのお菓子も、きっとその会話を聞いたからなのだろう。



「美味そうなもん作ってるじゃないか」

正守はクスクス笑って、机に近づいた。
指を軽く立てて皿にかけてあった結界を簡単に解除する。
そして乗っていたパンプキンタルトの一つをひょいと摘むと、口の中に放り込んだ。

「あーーーーーっ！！く、食うなよっ！！！」
「ケチ臭いこと言うなぁ・・・ホラ」

正守はもう一つ摘むと、今度は良守の口に投げ入れた。
甘いカボチャの風味が口の中に広がる。
やはり上手くいっていた、とその時ばかりは兄から気をそらせた。
するともっと甘い、柔らかな感触が唇に伝わった。

「っ・・・・・・！」
「ゴチソウサマ。今度はもっと甘さを控えめにしてよ。俺はその方が好きだから。・・・よいしょ」
「や・・・放せっ！」
「嫌だよ。久しぶりに良守に会えたんだもん。もう少しこのままでいさせて」

無理矢理抱きかかえた良守を、座った自分の膝の上に座らせる。
大人しくなった良守は、自分の頭を撫でてくる正守の掌の感触を受け入れる事にした。






後ろから抱き付いてくる兄貴は、俺しか知らない兄貴。



寂しがりな自分を救ってくれる弟は、俺しかしらない弟。



ゆっくりと午後の一時が過ぎていく。



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’07.10.24～10.31まで限定配布してました。
何　気　に　初　正　良　だ　よ　ね
2007.10.24