『守る理由(わけ)』
良守×時音
俺は時音が好きだ。
好きだからこそ、今のあいつの態度がどうしても俺の感に触ってしまう。
昔、まだ結界師としての修行を始める前、よく二人で遊んでいたのが嘘のようだ。
烏森に一人で(斑尾も一緒だったが)初めて赴いた時、あいつの態度は変わっていた。
あいつのばーさんから、この両家にまつわることを色々と聞いたのか、突き放すような口調で俺に話しかけてきた。
今までの楽しさが嘘のようで、俺は呆気に取られてあいつを見たのを覚えている。
そして俺の目の前で、俺が何ヶ月もかけてようやく形になってきた結界を、正確に・いとも簡単に作り上げて妖を消した。
「あんたも、方印が出た人間なら、もっと修行を積みなさいよ」
唖然と見る俺に、あいつは淡々とそう言ってきた。
きっと惨めな顔をしていたに違いない。
そのまま泣きながら家に帰ってきた俺を、斑尾は勿論のこと、じじいにも散々に怒られてしまった。
それからだ。
俺が“結界師”と言う家業を嫌うようになったのは。
しかしその嫌々やっていたのが仇になり、あいつに今でも残る傷を作ってしまった。
自分の無能・無力を悟った日だった。
今は違う。
勿論家業を継ぐ気は全くないが、俺には俺だけの信念を持てるようになった。
『もう二度と、時音を傷つけさせない』
俺は、あいつをまもるためなら、いくら禁忌をおかしても、どんな罰を受けようとも決して苦にはならない。
だから、
強くなる。
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結界師を読んでメモ程度に書き残していた短編です。
2007.8.3
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