『どうしようもなくて』
火黒×良守
ぬるいですが
BL入ってます!
15歳以下の方の観覧は薦めません…!!
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「もっとマシな連絡手段取れねーのかよ」
「やっぱり目立った?」
目の前にいる黒髪の男は月の光を受けながらくつくつと笑った。
あーもう。
こっちがどれだけ苦労したか絶対分かってない顔だ。
志々尾や時音を誤魔化すのに頭をフル回転させたんだからな・・・。
事の発端は今日の昼。
いつもの様に授業を抜け出して、俺は志々尾と屋上に背中を預けていた。
そこへ鳥が飛んできた。
ただの鳥でない事は気配で分かった。
同じく気付いたようで、相変わらずのスピードで志々尾はそれを捕まえて戻ってきた。
「これ、お前のでも雪村のでもないな」
「あぁ。見たことねー式神だ・・・」
式神。
それは特殊な力を持った人間が使う事ができる使い魔の事。
身代わりの役目に始まり偵察用など、使える幅はとてつもなく広い。
連絡手段や偵察等に使う場合、墨村家は烏の様に黒い鳥、雪村家は白い鳩の形になる。
今目の前にあるのはその両家のどちらの物でもなかった。
紫がかった羽に、気味の悪い一つ目。
無駄に暴れるそいつは、力を込めた志々尾の手の中で軽く爆ぜて紙切れになった。
ひらりと落ちてきた紙を拾い、その紙に書かれているだろうその方印を確かめようと裏返して、俺は固まってしまった。
方印として描かれていたのは、炎を象ったものだった。
炎。
その色の名を持つモノはただ一人。
これは今夜、アイツが来る事を指していた。
「目立つもなにも!あの後散々だったんだからなっ!!」
俺は思いっきり怒鳴ってやる。
目の前の男はやはり笑いながら、かけていたサングラスを外した。
夜の闇に負けない、鮮やかな赤い瞳が姿を現した。
俺はその赤を見つけて、思わず口を閉ざした。
「何?そんなに俺を見てさ、楽しい?」
「・・・ちげーよ」
ずっと見ている事を指摘されて、俺はそっぽうを向いた。
火黒は一歩前に出て俺に近づく。
反射的に俺は後ろへ下がった。
そしてがしゃりと音を立てて、屋上の金網が背にぶつかる。
「でもさ。よくあれだけで、俺が今夜来るって分かったね」
「分かるよ。あんな大胆な事するの、ぜってーお前だけだし・・・」
「そんなに良く言ってくれるんだ。嬉しいなぁ」
「っ!?違うって!!」
「何意識してんのさ」
火黒が右手を俺の真横に突き出して、金網を握る。
そして残った手を俺の頭の後ろに運び、ぐいと自分の胸に抱き寄せた。
「君が元気になって、本当に良かったよ」
ぎゅうっと手に力がこもって、俺は身動きが取れなくなった。
あぁ。
こいつのお陰で俺は今ここに立ててる。
あの薬がなかったら、まだ布団の中に縛られたままだっただろう。
「あり、がとう・・・」
俺は小さくお礼を言って、火黒の背中に手を回した。
「ねぇ」
しばらく俺を抱きしめてから、火黒は顔を上げた。
頭を支えていた手を動かし、俺の右手を掴んだ。
反対の腕も同じ事をされて金網に押さえつけられる。
「やっぱり、コレに縛られてる・・・?」
手首を握ったまま、長い指で右手の掌をなぞった。
そこにあるのは見なくても分かる。
四角で刻まれた印。
「俺は別に縛られてるつもりはねーよ」
ここで戦うことで、自分の周りの者に被害が及ぶのを食い止められる。
俺はそれが出来れば他は何もいらないから。
こればっかりはとやかく言われたくなかった。
だからキッと火黒を睨みつけて、そう告げた。
「ふーん・・・まぁ、確かにそうかもね」
掌に顔を寄せて、そしてそこに軽く口付けする。
突然のことに驚いた俺は一瞬体を振るわせた。
それを横目で見た後、火黒はそこにぺろと舌を這わせた。
「・・・っぁ」
無図痒い感触が体を抜ける。
火黒は執拗にそこを何度も嘗め回した。
ただ手を舐められてるだけなのに、体が妙な反応をする。
その度に自分の声ではないような高い声が喉から溢れる。
怖い。
「っ火黒!や、め・・・っ」
「弱いみたいだね、ココ」
抗議の声を上げると最後に軽く舐めて、口が離れる。
そして火黒の顔が近くなった。
「俺さ、ずっと考えてたんだけど」
人間と妖が恋人になることってあるのかな。
耳元でゆっくりと低くささやかれて、俺は軽く声を上げた。
「知る、か」
「じゃあさ。試してみようよ」
有無も言わさず口をふさがれる。
「んんっ・・・ちょ、か・・・ふ、んく・・・」
「逃げちゃ駄目だよ」
火黒は腕をすり抜けようとした俺の体をがっちりと止め、意識を口元に戻す。
ねっとりと唇を舌で舐められて思わず口を開けた所へ、火黒の舌が中に入ってきた。
「ぁ・・・ん、ふ・・・・っ」
しばらくして聞こえてきた、ぴちゃ・・と水っぽい音が耳を大きく打った。
歯をなぞり、俺の舌を追って、どんどんと俺をかき乱していく。
立っているのもやっとで、火黒のスーツを掴んでずるずると下に落ちていっていた。
俺が崩れていくのも構わず、火黒も腰を落として俺の唇を追いかける。
息継ぎのためにようやく離れた時には、俺はもう頭が朦朧としていた。
「ねぇ」
火黒は俺の着物の襟をめくると、見えた首に舌を這わせる。
「俺さ、元々人間なんだよね。今は妖だけど・・・でもこうして君に執着してるって、何か変だよね」
掠れた吐息が首筋に触れて、俺は息を呑む。
首元に顔を埋めながらゆっくりと動き始めた。
「ちょ、火黒!」
「何?」
首に残る小さなかすり傷。
火黒はそれをとても愛しそうに眺め、そこを何度も行き来する。
まだ治らない傷は他の肌より敏感で。
そこを舐められているだけでこんなにも反応してしまう自分に驚いてしまう。
「ん・・あ、ぁ・・・はぁ・・」
「何か言いたいんじゃなかったの、良守?」
「あ・・・こ、」
「こ?」
荒い息をつきながら、まるでうわ言のように口を動かす。
「こ、わい・・・」
「良守・・?」
本当にこのまま殺されても可笑しくない状況。
そして学校の屋上。
おまけに相手が男で、妖。
与えられる刺激に過剰な程反応する自分の体。
恐ろしく未知な世界に踏み入れようとしている気がして、じんわりと視界がぼやけた。
「ちょっ・・・泣かないでよ」
初めて火黒が慌てた。
怖くて、でも好きで。
そんな気持ちが一気に俺を襲ったらしく、火黒の前で泣いてしまっていたようだ。
俺の背中に手を回し、再び火黒の胸の中に納まる。
頭を優しく撫でられてようやく落ち着きを取り戻した。
「ごめんね、良守・・・」
火黒は自分の足の間に俺を置いて金網に背を預けている。
後ろにあった大きな月は天の中心まで昇っていた。
その月と赤い目、そして風になびく黒い髪。
全てが俺に向けられている。
俺はごしごしと目をこすってうつむいた。
「ごめ、ん・・・急に泣いたりして・・・」
「俺もごめんね。まだ早かったよねー。あの時良守が泣いてくれなきゃ俺、絶対止められなかったもん」
火黒はさも可笑しそうにくつくつ笑った。
その笑顔に俺もつられて笑う。
「・・・でも、ごめん。何か訳分からなくなってさ・・気付いたら泣いてて・・・」
「今日は良いよ、俺も急に押しかけて迷惑かけたしね。でも覚えといて、」
俺は優しくないよ。
小さな声で耳元に告げられる。
そんな些細な事にいちいち反応してる俺は、どうやら目の前の妖に本気で惚れてしまっているのを確信した。
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中途半端な終わり方でごめんなさい;
頑張ろうかと思いましたが、無理でしたorz
いつかリベンジ…
2007.9.18
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