『オレンジ』
火黒×良守
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甘酸っぱいにおいが鼻をくすぐる。
上を見上げると、大きな木に何十というオレンジがなっていた。
地面を蹴って、ひょいと梢に向かう。
「ふーん…」
適当に摘んだ一つのオレンジを、火黒は面白そうに見た。
手の上で転がすと、甘いにおいを散らしながらころころと動く。
「そう言えば、昨日のアイツは特別狂ってくれたなぁ…」
丁度掌の中央に来たオレンジを、ぐじゃりと握り潰す。
独特の芳香を放って、薄い黄色の果汁が手を伝って滴り落ちた。
液体が白いシャツにじわりと染み込む。
その感触にゾクリと快感を感じた火黒は、赤い舌を己の手に這わした。
甘い、甘いにおいと少し苦い味が口の中に広がる。
はぁ…と嬉しそうな溜め息をつき、ゆっくりと下を見た。
「何してんだよ。昼飯だってのに」
「あれれもうそんな時間?ってか起きれたんだ、よかったー」
「っなななな何言ってんだ!!おおおお前のせいだろ!?」
「へー」
そう言って再び手を舐める。
今度は自分を呼びに来た、愛しい少年に見せつけるように。
息を呑む音が聞こえて、それだけで優越感に浸る。
どこまで自分はコイツに酔うんだろうか。
甘酸っぱいオレンジに捕まった一羽の鳥は、高い梢の向こうに。
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同棲中の火良の日常。
オレンジの芳香剤って結構好き嫌いあるだろうけど、天然物は絶対いい香りだと思う。
2008.3.15
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